木目と、旅と、おつまみと、

 

オレンジ、ピンク、グリーン、色あざやかな布を纏った女性たち、バケツを差し伸べる乞食の子供の濁りなき目の輝き、荒涼とした砂漠の稜線にゴマ粒ほどの人間が数人…

 

まがりcafeとbar トゥンバで見せてもらった、スイバ店主 ネパさんの旅の写真。それは、インドで手に入れたらしい、朱色の差し色が美しい紺色の布に小さなミラーが数枚はめ込まれた表紙のアルバムに、手書きのコメントとともに納められていた。

 

現在トゥンバは小清水町にある手作りcafe スイバを間借りして営業している。スイバのオーナー ネパさんが斜里町で宿作りにあたっているためである。私も今夏、2度ほど宿作りのお手伝いをさせていただき、そのつながりでトゥンバさんを知った次第。ここではインド、タイ、ネパール、台湾、カンボジアなど、アジア圏をはじめとする世界各国の料理が食べられる。

 

以前スイバさんで食事をした時、手編みのわら笠や木彫りの個性豊かな手作り照明、丁寧に面取りされ炙り出しにより木目が強調された木材、複雑な装飾が施された階段の手すりなど、内装の作り込みに圧倒され、夜になるとこの空間はどうなるのだろうかと気になっていた。しかし、トゥンバさんのことを知って2か月間、行きつけの店ばかり行ってしまって、未だ行けずにいた。今日も、夜7時過ぎに20分車を走らせてまで出て行くのか悩んでいた。しかし、明日も仕事が休みだということも手伝って、えいやっ、と車を走らせた。

 

来て正解だった。いただいたのは世界のお漬物4種盛りと、蒸し鶏とエビの生春巻き。ノンアルコールビールといっしょに楽しむ。お漬物は、大根、人参、ズッキーニのピクルス、長ネギと赤タマネギ、カレーの葉を使ったインドの漬物、ナスのオリーブオイル漬け、それとザワークラウト。それぞれに美味しいけれどそれぞれに違う味わいで、食べていて楽しい。生春巻きも、春巻きそのものが美味しいのはもちろん、味も辛さも違う3種類のソースが付いてくるのが嬉しい。スイバさんのお料理がとても美味しかったので期待してきたが、その期待を裏切らない。

 

その時、お客さんは私一人だけ。トゥンバ店主 あつしさんから手渡されたネパさんの旅のアルバムを見せてもらいながら、これからしばらく仕事を続けていくつもりであること、でもやはり旅への憧れが強いこと、ついでに、いつか自分の場所を持ちたいということをぽつぽつとこぼした。あつしさんも、トゥンバを始める前は現在一緒にお店を営んでいるパートナーの方と軽自動車に乗って日本中旅をしていた旅人。その昔はギター片手に世界一周したらしい。

 

「いつだって辞めてもいいんだから」と優しく後押ししてくれたけれど、う〜ん、やっぱりまだ数年は先かな。まだ5か月しか経ってないしね。

 

でも私にもネパールのロクタペーパーとか、インドのハンドプリントとか、出かけて行って見てみたいものがたくさんある。ヨーロッパで製本修行もしてみたいし。

 

大変名残惜しかったけれど、お店のお二人に見送られながら「また来ます」と言って店を出た。10月終わりの小清水町、外の空気はひやりと冷たかったけれど、おいしい料理と温もり溢れるお店で心はほっかほか。月並みな表現だけれど、まさにこんな気持ちだった昨日です。

 

※前回の記事、次回に続く予定でしたが、続きはまた別の機会に書きます!適当ですね!