飲み会

 

カレイの煮付け、ホヤの塩辛、タチの天ぷらにさつま揚げ…

 

所狭しと並べられた居酒屋メニューを次々つまみ上げ、とりあえずの一杯目、生ビールと一緒に流し込む。

 

職場の飲み会に誘われた。参加人数は10名ほど。

3回目の飲み会だが、参加者の昼間との別人っぷりには全く慣れない。職業柄きっちりと振舞わなければいけない分、お酒の席では皆さん愉快な人になってしまう。昼間押さえ込まれる本性が夜弾けてしまうとはよく言われるが、まさにこのことかとまざまざ見せつけられては衝撃を受ける。

 

なんだかこの豹変っぷりって不思議だなぁと毎回思う。けなしあったり、ギャグを言いまくってはしゃいだり、バーのカラオケで懐メロを歌いまくったり、夜のうちに発散し、あのどんちゃん騒ぎは何処へやら、どんな赤ら顔の人でも陽が昇れば涼しい顔をして職場に現れるのだ。そんなの太古の昔から変わらない社会人の普遍的様相だけれど、その様相を見るたび、なんとも言えぬ新鮮味と高揚感とに包まれてこちらはほっこりしてくる。

 

私はどれだけ飲んでも記憶が飛ぶことはないので、寝て醒めた後も「あの一言最高だったな」と他人が発した細かな発言まで思い出しては笑い、一人楽しんでいる(変なやつ)次回の飲みの席までしばらくあの様子は見られないんだと、珍しいものを見た優越感と寂しさに耽る。

 

ほっこりする気持ちが味わえるし、思い出し笑いができるしで、飲み会とは私にとってもはやエンターテイメントの一つとなりつつあるのかもしれない。気疲れするし出費もかさむからとここ最近は飲み会を倦厭していたけれど、私はやっぱり飲み会が好きだったのかと近頃また実感している。

 

急性アルコール中毒による痛ましい事故が相次ぎ、お酒を飲むも飲まないも、ましてや飲み会に参加するもしないも本人の自由ということが以前にも増して尊重されるようになった昨今、もはや「飲みニケーション」なんて言葉はあまり重視されない雰囲気となっている。もちろん、お酒の許容量は人それぞれだし、飲み会の雰囲気があまり好きでない人もいるということを忘れちゃいけない。だが、夜中のうちに盛り上がった後の充実感と、僅かでも縮まった相手との距離を考えると、美味しい酒を嗜みながら食事を楽しむことは周りと楽しく打ち解ける有効な手立ての一つだと認めざるを得ない。

 

そんなわけで、皆さんが酒の席に連れてくる愉快な”本性”が好き。お金が許す限りこれからもお酒の席に繰り出して行こうと思う。